小学校4年生の教育と小中一貫教育の推進
小学校4年生の教育が大変重要です。4年生の教育を充実させると小中学学校の教育は大きく改善します。最近書いた原稿を紹介します。
「小4教育の改革と小中一貫教育」
21世紀寺子屋暁塾
塾長 村 瀬 光 生
【はじめに】
高度情報通信社会の到来に伴い、様々な情報を共有できる利便な社会が出現した反面、新たな青少年育成の課題にも直面している。青少年の将来に対する意識に関する国際比較調査結果などからは、外国の青少年に比較して、将来に「夢や希望」を抱いていない若者が多いという深刻な課題が指摘されており、また、学校教育では、不登校やいじめの問題が引き続き増加傾向を辿っている。
小中高等学校の児童生徒のコミュニケーション力や人間関係づくりに課題を持つ児童生徒も増加しており、将来の職業への進路希望や自らの夢や生き方を明確に語れない青少年の増加や主体的で意欲的な学び向かえない子どもたちなど、様々な課題が噴出してきているように感じる。こうした青少年の育成課題の背景に、昔から言われる、いわゆる「10歳の壁」との関わりが大きいのではないかと考えている。
そして、小中一貫教育校への転換を図ることである。
【小学校4年生の担任の配置の課題】
小学校の校長をしていた折、学年職員の人事で一番頭を悩ましたのが、4年生の担任である。学年の職員配当の人事は、学年の児童や教職員の特性により総合的に構想するのであるが、一般的には、まず1・2年生の担任を決め、次に5・6年生の担任を決め、最後に3・4年生の担任を決めるのが通例であった。
発達段階からすると成長が著しいので、4年生の担任には、様々な配慮の出来る優秀な教員を配置しようと考えるのであるが、しかし、校内事故の防止やの基本的な学校生活への適応を優先し、1・2年生にベテランの教員を配置した。次に、高学年の進路指導や生徒指導の課題が多いこともあり、活動的な男性教員を多く配置した。そして、最後に3・4年生の担任を人選したように記憶している。
「10歳の壁」は、児童の成長過程の中で最も大切な時期であるとの認識をするものの、正直なところ、期待感を持って新採用教員を登用したり、他校からの転任してきた評価の定まらない比較的若手の教員を配置することが多かった。
【4年生の壁】
4年生は、活発で元気の良い学年であり怪我等は多いが、学年の当初は、反抗期に入っている児童も少なく、教師の指導に素直に従う児童が多い、しかし、成長過程に個人差が大きく。他人と自分を比較して劣等感を抱きやすくもなるのが、特徴である。また、児童は、「自我の目覚め」も現れはじめる時期でもあり、集団の決まりを意識して、その中にいる自分の立場や役割を考えようになる。そして、自分を客観視できるようにもなるため、人と比べて自分が劣っていると感じことが増え、自己肯定感が下がりやすくなる。
さらに、4年生になると学習でつまずくケースが増える。この時期から学習内容が抽象的になり、かつ、教科の学習内容が大幅に増え、算数では、単純な足し算、引き算から、少数や分数などイメージすることが難しいような内容へと発展したり、国語では、ただ文章を読むだけではなく、その背景にある問題への理解など思考力が求められるようになる。そして、学習のつまずきをきっかけに、学校生活に対してストレスを感じるようにもなる。そうした心身の発達が著しい時期であるので、細やかな観察と適時適切な指導が求められるのであるが、いわゆるギャングエイジであるため、自己主張も強くなり、児童同士のトラブルも急激に増加する。また一方では、社会的現象や自然現象などあらゆることに興味や関心を示し活動的な成長期である。
しかしながら前述したように、担当する教職員は、教員経験の少ない職員が担当するため熱意はあるが、教師としての余裕がないため、一人一人の特性や関心事を理解した柔軟な指導ができないことが多く、興味関心を育てることが出来ずに意欲を削ぎ、主体性を育めないことも多くある。この時期こそ、包容力があり指導力のあるベテランの教師の指導が必要であるが、現状は、経験と余裕のない教師が分担することが多い。
【義務教育の改革の視点】
以上のような発達課題の多い小学校4年生の改革を考えたとき、現行の義務教育制度での小学校6年制、中学校3年制の学校運営の改善を図り、小中9カ年を4-3-2のくくりで学校を運営する「小中一貫教育校」(義務教育学校)への転換を図ることで、小学校4年生を低学年部(1~4年)の最高学年と位置づけ、充実した教員の指導体制を構築することで、急激に増加してきている不登校児童生徒、いじめ問題、中一ギャップの改善、そして、主体的な学びの推進などの今日的な学校教育の教育課題改善を目指す必要があるのではないかと考えた。
【小中一貫教育の実践研究から】
東京教育研究所(東京書籍)では、2017年度から先行する全国の小中一貫教育校の優れた教育実践を実地調査し、6年間に亘って、研究報告書のまとめ、全国の学校に配布してきた。その研究報告書(令和5年度版)「小学校の教科担任制の導入と小中一貫教育」の中で、小中一貫教育の以下のように分析した。
我が国は、小中一貫教育については、昭和46年の中央教育審議会答申(46答申)の中において、幼小連携、小中連携・一貫、中高一貫など、戦後、一元化された学制(6・3・3・4制)の改善の課題として指摘された。幼小中高の学制の区切りの在り方については、研究開発学校等において先導的に研究されるなどの経緯もあり、「学制改革」の議論が始められてから既に半世紀が経過している。
また、我が国では、戦後の経済成長を背景に人口が継続的に増加したことに伴い学校増設が続いたが、2004(平成16)年をピークに人口減少に転じるなどの社会変動により、学校制度の転換が課題となっていく。とりわけ、地方においては、急速な少子化に伴う小中学校の児童生徒の減少が小学校、中学校の統廃合の課題が浮き彫りになる。一方、都市部においても、都市の発展や再開発に伴う住環境の変化(郊外への移住、大型集合住宅の建設など)に伴う、学区人口の偏りが進み、学校区という考え方に一定の変更を求めることになる。それが、学区の自由選択制や小中一貫教育を導入することにつながってきたととらえられる。そこには、学校で行われる教育活動は一定の規模を保つことを是とすることを前提とするとともに、発達加速などの子ども事情を踏まえて教育効果を追求する一貫した課題があった。
【小中一貫教育の教育効果についての分析】
東京教育研究所の小中一貫教育に関する6年間の調査ッ研究(実地調査、義務教育学校へのアンケート調査、各種調査結果に基づく検討会の議論)を通して、次のことを小中一貫教育の教育効果として考えた。
- 小中一貫教育校(特に義務教育学校)は、教職員の相互乗り入れが実現し、前期課程(小学校)の教科担任制を円滑に導入し、後期課程(中学校)の少人数指導のT・T指導や部活動指導の連携等、小中それぞれの特性を活かした指導体制が組織され易い。
- 地域や保護者の協力を得やすい小学校が中学校と一体化することで、小中学校が地域コミュニティの核としての機能を発揮している事例が多い。
- 9カ年間を見通した学校教育目標を掲げることにより、小中段階の教職員共通の長期展望を持った教育活動が展開できる。また、小中一貫教育カリキュラムを作成する過程において、「学習実態に応じた学校独自の教育課程の編成」が教員の意識に深く浸透し根付くことが窺い知れた。
- 総合的な学習の時間の学び、特別活動、清掃活動などで、縦割りの教育活動が積極的に展開され、幅広い異年齢間交流の機会の充実が教育効果を高めている。
- 教科指導の研修等を通して、小学校・中学校の学習指導要領や児童生徒の発達段階の理解が深まり、学習指導、児童生徒理解、学級経営の能力等の向上が図られている。
- 学校施設の複合的な利用ができ、学校運営経費の削減にもつながり学校設置者としての市町村の財政的負担の軽減に繋がる。(学校図書、プール、給食施設等共用)
- 「中一ギャップ」の改善及び小学校6年相当段階の児童のリーダー性育成という旧体制の課題は未評価である。ただし、「4・3・2」型の学校運営の場合、小学校4年生の成長が著しく、リーダー性や社会性の育成、学習の意欲化や生徒指導上の課題の改善に影響を与えているのではないかとの意見があった。
- 調査対象校では、いずれの学校においても子ども達がはつらつとしている姿が多く見られた。とりわけ、新たなことに挑戦するなど意欲ある教員体制下では、児童生徒も学習意欲がたかまり、主体的な学習が行われていると、強く感じられた。
(東京書籍株式会社の中央教育研究所 7究報告103 第7章 より)