中学受験と子どもの成長を考える
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中学受験と子どもの成長を考える
近年、私立中学校や国立大学附属中学校、県立の中高一貫校などへの進学を希望する家庭が増え、中学受験への関心が高まっています。その背景には、特色ある教育への期待に加え、私立高等学校の授業料支援制度の拡充によって、中学校から私立を選択しやすくなったことも影響していると考えられます。
首都圏では、小学校6年生のおよそ18%が私立・国立中学校を受験するという調査結果もあります。中学受験に向けた準備も早期化し、早い子どもは小学3年生から進学塾に通い始め、高学年になると、土曜日や日曜日にも授業や模擬試験を受けているようです。
私は、これまで二校の小学校で校長を務めました。その経験から、小学校3、4年生は、心身の発達が著しく、子どもが大きく成長する非常に重要な時期であると感じています。
特に4年生前後は、一般に「10歳の壁」あるいは「9歳・10歳の節」と呼ばれることがあります。具体的な事柄だけでなく、次第に抽象的な概念を理解できるようになり、自然や社会、人間関係など、さまざまなことへの興味や関心が広がっていく時期です。この時期の体験や人との出会いが、その後の生き方や進路にも大きな影響を与えることがあります。
一方で、学校教育においては、学級経営や学年指導の難しさが表れやすい時期でもあります。身体の成長に伴って活動が活発になり、けがをしたり、保健室を利用したりする子どもも増えてきます。
また、自己主張が強くなるとともに、自分と友達を比較するようになります。自信を深める子どもがいる一方で、劣等感を抱く子どももいます。他者を見る目が厳しくなり、友達を批判したり、仲間関係をめぐって衝突したりすることもあります。そのため、友達同士のけんかや仲間外れ、いじめなどの問題も起こりやすくなります。特に4年生の担任は、一人一人の心の動きを丁寧に捉えながら、子ども同士の関係を育てていかなければなりません。大変であると同時に、非常に重要な役割を担っています。
このように、小学校3、4年生は、子どもが日々成長し、人間として身につけるべき多くの課題に向き合う時期です。そうした大切な時期に、受験のための知識を身につけることだけを優先し、詰め込み型の学習に多くの時間を費やすことが、本当に望ましいのでしょうか。
もちろん、中学受験そのものを否定するものではありません。目標に向かって努力することは、学力だけでなく、忍耐力や計画性を育てます。また、子どもの個性や能力に合った学校を選択できることも、中学受験の大きな意義です。
しかし、受験勉強によって、子どもの成長に必要な体験や時間が失われてはなりません。この時期だからこそ、自然の中で遊び、地域社会に触れ、スポーツや文化活動に取り組み、友達と自由に遊ぶ時間を保障する必要があります。家族とゆっくり語り合うことや、自分の好きなことに夢中になることも、子どもの豊かな成長には欠かせません。
大切なのは、「中学受験をするか、しないか」という二者択一ではありません。受験が子どもの生活のすべてになっていないか、保護者の期待が子ども自身の希望を上回っていないか、その子らしい成長が守られているかを、常に見つめ直すことではないでしょうか。
中学受験は、子どもの将来を豊かにするための一つの選択肢です。しかし、それが子ども時代を犠牲にするものであってはなりません。
学力を伸ばすことと、心身を健やかに育てること。その両方を大切にしながら、一人一人の子どもにとって望ましい中学受験の在り方を、家庭・学校・受験塾がともに考えていく必要があります。
子どもたちに、学ぶ喜びとともに、ゆとりある豊かな子ども時代を保障したい――。それが、二校の小学校で校長を務め、多くの子どもたちの成長を見守ってきた私の願いです。

