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塾長ブログ

啐啄同時(そったくどうじ)

啐啄同時(そったくどうじ)

 私は、来月から東京書籍株式会社(教科書会社)のホームページの新規採用教員のコーナーに毎月アドバイスを掲載することになりました。

その最初(4月号)に、初めて教壇に立たれる全国の新規採用教員に向けて、教育で心がけなくてはならない一番大事なことは、この「啐啄同時」という言葉だと書きました。教師には、教育実践上の留意しなければならないことは、沢山ありますが、指導のタイミングが最も大事だということを書きました。どんなに素晴らしい指導でも時機を逸すると教育効果が薄れたり、逆効果になったりすること主張しました。

啐啄同時という禅宗の教えがありますが、「啐啄同時」とは、鶏の雛が卵から産まれ出ようとする時、卵の殻の内側から殻を突く音を立てます。これを「啐」といいます。そして、その音を聞いた親鳥が殻の外側を啄(ついばん)で割ることを「啄」といいます。この「啐」と「啄」が同時であって、はじめて殻が破れて雛が産まれるのです。これを「啐啄同時」というのです。

この関係については鳥に限らず、人間の親子の関係や学校の先生と児童との関係に置き換えても、学ぶべき大切な言葉だと思います。教師は子どもの様子を的確に把握して、主体的な学びへの姿勢を促すとともに、子どもの意欲を見極めて指導する機会を逃さないようにすることが肝心です。この雛鳥の誕生のように教え子の様子を見ていて、殻を割ろうとする絶妙のタイミングを見計らって、適切な指導をすると教師の指導の教育の効果は絶大になることを書きました。

 「啐啄同時」は、子育てそのものにも極めて重要なことでありますが、このタイミングを逃してしまうことが多くあります。子どもが自らの殻を破って大きく成長しようとするのをとどめてしまうことや、殻を内側から啄む「啄」に気づかないことがあります。

我々大人は、子どもの立場になって考えることを忘れがちです。思春期の子どもは、日々変化していることを心しておくことが、子育ての極意です。我が子の成長の絶好のタイミングを逃さないようにしましょう。